教えのやさしい解説

大白法 649号
 
三大秘法(さんだいひほう)
 三大秘法とは、「本門の本尊」「本門の戒壇(かいだん)」「本門の題目」をいい、宗祖日蓮大聖人が説き顕された独自の教法であり、本宗宗旨(ほんしゅう しゅうし)の根本です。

 三大秘法の名目
 日蓮大聖人の御書の中で、本門の本尊と戒壇と題目という三大秘法の名前が、そろって初めて説き明かされたのは、佐渡配流御赦免(ごしゃめん)以後のことです。
 すなわち、日蓮大聖人が身延に入山(にゅうざん)されて間もない文永十一(一二七四)年五月の『法華取要抄(ほっけしゅようしょう)』に、
 「如来滅後二千余年に竜樹(りゅうじゅ)・天親(てんじん)・天台・伝教の残したまへる所の秘法何物ぞや。答へて曰(いわ)く、本門の本尊と戒壇と題目の五字となり」(御書 七三六n)
と説かれています。
 その所以は、この三大秘法は日蓮大聖人が竜の口の発迹顕本(ほっしゃくけんぽん)、また三類の強敵扣発(ごうてき こうはつ)・数々見擯出(さくさくけんひんずい)等の法華経身読(しんどく)を完結あそばされた後、末法の御本仏としての御境界において初めて顕された法門だからです。
 この三大秘法中「本門の本尊」とは、日蓮大聖人が御自ら御図顕(ごずけん)あそばされた信仰の対象である本尊を指します。
 また「本門の戒壇」とは、本門の本尊を安置する場所をいいます。
 また「本門の題目」とは、本門の本尊を信じて唱える題目のことです。

 三大秘法は末法の三学
 三大秘法と三学の関係について『御義口伝(おんぎくでん)』に、
「此の本尊の依文(えもん)とは如来秘密神通之力の文なり。戒定慧(かいじょうえ)の三学、寿量品の事(じ)の三大秘法是なり」(同 一七七三n)
と説かれているように、三大秘法と三学にはたいへん深いつながりがあります。
 まず三学とは、仏道を修行する者が必ず修学すべき基本的な修行であり、戒学・定学・慧学の三つをいいます。
 まず「戒」とは「戒律」のことで、防非止悪(ぼうひしあく)をいいます。つまり戒律をもって身体と口と心の非を防(ふせ)ぎ、悪を止め善を行うことです。
 次の「定」とは「禅定」のことで、精神を統一し、雑念を払い、心の散乱を防ぐことです。
 次の「慧」とは「智慧」のことで、諸々の煩悩(ぼんのう)・業・苦の三道を明らかにし、三道に縛(しば)られた状態から解(と)き放たれることをいいます。
 この三学は、それぞれ単独で用(はたら)くのではなく、互いに補(おぎな)い助け合うことによって煩悩を対治し、仏道が成就されるのです。
 このことについて、中国の道宣律師は、
 「先ず戒をもって捉(とら)え、次に定(じょう)をもって縛り、後に慧(え)をもって殺す」
と述べています。
 このように釈尊の仏法においては、戒律を持つことによって禅定を助け、禅定を得ることによって智慧を発(おこ)し、智慧によって煩悩を断じて仏道を成就したのです。
 この三学について、日寛(にちかん)上人は、
 「凡(およ)そ戒定慧は仏家の軌則なり、是の故に須臾(しゅゆ)も相離るべからず」(六巻抄 八五n)
と仰せられています。あらゆる仏教の教えは、すべて三学を離れるものではありません。
 次に、日興(にっこう)上人は『上行所伝三大秘法口決』において、
 「戒とは本門の戒壇、定とは本門の本尊、慧とは本門の題目(趣意)」 (御書 一七〇三n)
と明かされているように、末法における戒定慧の三学とは、三大秘法のことです。
 したがって、日蓮大聖人が建立された三大秘法こそ一代仏教の根幹であり、成仏得道の要諦(ようてい)なのです。
 『三大秘法禀承事(三大秘法抄)』には、
 「実相証得の当初修行し給ふ処の寿量品の本尊と戒壇と題目の五字なり」
 (同 一五九三n)
と仰せられています。すなわち、この三大秘法は「実相証得の当初」である久遠元初において、御本仏自らが行じられた根本究極の法体なのです。

 三大秘法開合(かいごう)の相
 三大秘法の開合の「開」の相について、日寛上人は『依義判文抄』の中で、
 「一大秘法とは即ち本門の本尊なり。此の本尊所住の処を名づけて本門の戒壇と為(な)し、此の本尊を信じて妙法を唱うるを名づけて本門の題目と為すなり」
 (六巻抄 八二n)
と仰せです。すなわち一大秘法である本門の本尊に戒壇と題目が具(そな)わり、三大秘法と開かれるのです。
 さらにまた、
 「本尊に人(にん)有り法(ほう)有り、戒壇にい義(ぎ)有り事(じ)有り、題目に信(しん)有り行(ぎょう)有り、故に開して六義と成る。此の六義散じて八万宝蔵と成る」(同)
と仰せられ、本尊に人と法があり、戒壇に義と事があり、題目に信と行があって六義となり、この大義がさらに釈尊の五千・七千の経巻をはじめ、一切の経教である八万四千の法門に開かれると教示されています。
 次に、開合の「合」の相については、
 「之れを合する則(とき)んば八万宝蔵は但六義と成る。亦(また)此の六義を合すれば則ち但三大秘法と成り、亦三大秘法を合すれば則ち但一大秘法の本門の本尊と成るなり。故に本門戒壇の本尊を亦は三大秘法総在の本尊と名づくるなり」(同)
と仰せられています。つまり八万宝蔵は六義に、六義は三大秘法に、三大秘法は一大秘法の本門の本尊に帰結(きけつ)するのです。
 したがって、本宗僧俗は、三大秘法総在の本門戒壇の大御本尊を根本として、血脈付法の御法主日顕上人猊下の御指南のもと、五年後の「『立正安国論』正義顕揚七百五十年」の御命題達成に向け、より一層、宗旨の三大秘法弘通を実践することが大切です。